コラム
鳥屋野南モデルハウスに込めた想い。
令和4年4月17日。新潟市中央区鳥屋野南に、ノモトホームズの新しいモデルハウスが完成しました。
今回は設計顧問で建築家の泉幸甫先生に、鳥屋野南モデルハウスについていろいろとお話を伺いました。
自然素材に現代的要素を盛り込んで時代に合った家に。
鳥屋野南モデルハウスの設計コンセプトについてお聞かせください。
ノモトホームズのモデルハウスを作るのは竹尾モデルハウスに続いて2度目です。
前回(竹尾モデルハウス)から17年経ち、時代も変わりました。
時代で変わるもの、変わらないものがありますが、時代に合ったものを作っていきたいなと思いました。
特に考えたことは、温熱環境です。
竹尾モデルハウスを作ったときは、まだそうしたことがあまり問われていないところもあったのですが、今回はそこ(温熱環境)をきっちりやろうと決めて、断熱(Ua値=0.34)と気密(C値=0.2)にこだわり、床下エアコンと小屋裏エアコンで全館を冷暖房するなど、温熱環境を良くしました。
冬はかなり暖かく、夏涼しい家になったと思っています。
竹尾モデルハウス(2005年竣工・現在は事務所移転に伴い、解体済)は原理主義と言っても良いくらいに自然素材を使って作りました。
床は杉材、壁は漆喰、という具合に非の打ちどころがないような自然素材の住宅です。
建具は合板で作るのがほとんどですが、竹尾モデルハウスの建具は杉の無垢材で作っている。
そういった自然素材の作りは鳥屋野南モデルハウスでも引き継がれていて、それが2階部分になります。
床は杉材、壁はしっくい、建具は木製の無垢材を使っています。
ところが1階の部分は、自然素材の手法を使いながらも、現代的な要素も入れ込むことによって、ある程度価格を抑えたり、明るい環境を作ったりしています。
新潟は雪国で、冬はどんよりとして少し陰鬱な感じがしますけれども、そういう感じがしないように大きな窓を取って、明るい陽射しを入れるように努力しています。
そういったことが以前のモデルハウスとの違いで、それがある意味、この展示場の個性になっていると思います。
竹尾モデルハウスとの共通部分は?
自然素材で作っているという部分は2階が引き継いでいますし、1階においても自然素材的な要素はかなり引き継いでいますね。
例えば1階の天井には杉や松の現し梁があります。
家を建てる際、通常は輸入材が多いのですが、鳥屋野南モデルハウスは全て国産材を使っています。
こうした自然素材の柔らかさの部分と、コストを下げるための手法と言いますか、いろいろな人が手にできる形をどう作るかということに工夫をしている建物だと思います。
建築家の設計プロセスをノモトホームズに伝える機会になりました。
今回の設計では泉幸甫建築研究所の元所員で、現在弊社の設計顧問の伊藤誠康さんとノモトホームズの設計担当も参加し、泉先生より設計についてご指導いただきました。そこにはどのような思いがあったのでしょうか。
建築家はデザインも研究していますし、技術的なことも時代の移り変わりのなかで、相当いろいろなことを調べたり勉強したりしてきているんですね。
そういったものを工務店の方々にどうやったら伝えることができるのかという思いで、ノモトホームズの竹村君と田中君と、私の事務所の出身者でノモトホームズに協力している伊藤君と、4人で設計を進めました。
私の事務所で全部図面を書いてしまえば早く出来てしまうのですが、設計をどうやって進めていくのかを見せながら、かつ指導しながら図面を書いてもらいました。
僕の事務所に勤めて修行するようなものだったと思いますが、そうやって学んで、今度は僕がいなくてもそういう設計ができるようになってほしいなという思いですね。
展示場を建築家が設計して、あとは工務店だけで設計する場合、作るものがずいぶん変わってしまうことがよくあるんです。
そうならないように、ノモトホームズの設計の人たちに上手になってほしいと思って、一緒に設計のプロセスを体験してもらったという訳です。
相当勉強になったと思います。
いろいろな人が、いろいろな目的で集う住宅展示場に。
今回はカフェを新設して地域との接点を作ろうということで始まったプロジェクトでした。泉先生としては、どのようなことを考えながらの設計でしたか?
カフェに来る人もいるし、庭がすごく広いので、庭でマーケットを開いたりもできる。
ただ単に住宅展示場というのではない、たくさん人が集まれる場所になるようにと考えて作りました。
多様なものが混じったほうが物事は活性化しますから、
住宅展示場だけでなく喫茶店や庭にいろいろ人が集まる、言うなれば地域のセンターのような、
と言うと大げさすぎるかもしれないですけど、気軽に利用でき遊びにも来れる、
いろんな意味で利用できる場所になってくれればなと思っています。
モデルハウス自体も、家を作りたい人だけが見に来るんじゃなくて他の用途に使ってもいい。
例えば料理教室や太極拳教室でもいいかもしれないですね。
いろんなことに使えて、地域の皆さんが集まれるような場所になっていただけたらなと思っています。
これからの住まいは、作り手と住まい手が一緒に育てる家であってほしい。
これからの時代に求められる建築、住まいとは。
大変な時代を、いま体験していますね。
コロナ、ウクライナの問題と、僕が建築の設計事務所を始めて40年になりますが、これだけ激動した時代は無かったと思います。
そのなかで、今までと同じような、極端な例で言うと高度成長期のようにたくさん作ってたくさん壊していくような時代では無くなってきた。
一個一個の建物を丁寧に作って、丁寧に育んでいくという時代が来たといいますか、そういう時代になってほしいなと思いますね。
良い環境というのは、作って壊すなかで出来るものではなくて、住み手が建物にちゃんと関わっていくことがとても大事です。
そういう意味では、丁寧な住まいづくりをする工務店が重要であり、工務店と建て主さんの関係が長い時間続いていって、その建物を守り育てていく。
そういった住まいづくりがこれからは必要になってくるでしょうね。
最近はリノベーションが増えていますけれど、作った工務店と末永く付き合いながらリノベまでやっていくというふうになっていくと、本当に工務店と建て主さんのいい関係が作られていくと思います。
鳥屋野南モデルハウスを訪れるお客様へメッセージをお願いします。
ここの展示場にいらっしゃる皆さんにお願いしたいことは、細かいところまで見ていただきたいということです。
例えば階段の手すりの触り心地や大きさ。
すごく掴みやすい形で、細いけれどしっかりしている。
これを成立させるためには、いろいろなことを考えてありますから、そういったところも見てほしいです。
和室の欄間もすごく細かい仕事をしてあります。
これは新潟の建具屋さんが作ってくれて、今でもこういうものを作れる人がいるんですね。
こういうものを使っていただけると地域経済にも貢献することになりますし、伝統的なデザインを後世に残すこともできます。
それをモダンな形に使っています。
他にもいろんなところに気遣いがたくさんあって、発見していただけたらと思っています。
また、できたら泊まっていただけたら面白いかなと思っています。
最後に、これからノモトホームズが目指すべき工務店像をお聞かせください。
地元に密着し、地元の職人さんたちと、地元の風土に合った建物を丁寧に作ってもらいたいなと思っています。
もうひとつはデザイン的にさらに優秀になっていってほしい、技術的にも優れた工務店になってほしい。
そして新潟を先導するような工務店になってほしいと思っています。