施工事例
粟山の家
新潟市の閑静な住宅街。3方が道路に面した角地に建つ「粟山の家」は、黒く塗装した板張りの外壁が特徴的な建物である。敷地は約60㎝の高低差があったため、一部を高低差を活かしたスキップフロアとし、1階にはビルトインガレージを設けている。中庭を囲み、敷地の形状に沿って配した板塀には外壁と同じ杉板を使用しているが、それぞれ種類の異なる塗装を行っている。月日を経ることでそれぞれが経年美化していき、竣工当初とは違った表情が町並みに対して滲み出ていく仕掛けとした。
板塀で囲われた中庭は雑木と自然石を用いた作庭とした。中庭に面してリビングが配置され、2階をオーバーハングさせたことで天井のある屋外のデッキ空間(中間領域)が生まれた。この空間は屋外ではあるが、天井にはリビングの天井仕上げと同じ杉羽目板の上小材を仕上げとして使うことで、室内外の連続性が生まれるよう意図した。また、リビングとデッキ空間の断熱境界となるサッシは、高さ寸法を特注し天井までの高さとすることで「下がり壁」が出来ないよう配慮し、ノイズを取り除いたことで、より室内外がシームレスにつながる設計とした。
内部の造作家具は建築士でもある建主が3Dソフトで作った具体的なイメージを図面化・具現化している。初期計画の段階から建主と一緒に設計していくプロセスは楽しく、また室内の漆喰壁の一部を建主自らが塗るワークショップも行ったことで、作り手にとっても思い出深い住まいになったと思う。